国家資格キャリアコンサルタント(以下「国家資格」)、国家検定「キャリアコンサルティング技能検定」(以下「技能検定」)(1級・2級)の“合格のポイント”
大前提―――
「国家資格と技能検定の試験対策を別物と考えない」
国家資格と技能検定、また技能検定でも1級と2級では、求められる技能は異なります。
しかし、それぞれの試験範囲は学科試験も実技試験もほぼ同じで、言ってしまえば問われる内容の深さの違いがあるだけです。
そのため、国家資格⇒技能検定2級⇒1級というステップアップを目指すのであれば、それぞれの試験対策を「別物と考えないこと」。これがまず、効果的な試験対策を行なう上での大前提となります。
その上で、以下、試験合格のポイントをお伝えいたします。
合格のポイントその1
試験を実施する側の意図をしっかり理解する
「試験を実施する側が何を求めて試験を行ない、問題を作成しているのか」。
その意図をあらかじめ理解しておくことが大切だと私は考えます。
それは言い換えれば、キャリアコンサルティングが「なぜ必要で」、キャリアコンサルティングを行なう人には「何が求められているのか」、という大局をしっかり把握するということです。国家資格や技能検定はこれらのことを背景として生まれた試験なので、「なぜ必要で」「何が求められているのか」が理解できれば、自ずと正答率がアップするのです。
逆に、上記のことを行なわずに試験対策の学習をすると、特に実技試験(論述・面接)の得点が伸びない傾向にあります。なぜなら、その論述や面接が、試験実施側の意図を汲んだものになっていない可能性が高いからです。
では、「なぜ必要で」「何が求められているのか」を知るにはどうすればよいか?
それは、以下の出題範囲と細目をじっくり見ることです。
そして、学習前のみならず、学習中にも確認して、頭と体にしみこませましょう。
合格のポイントその2
過去問を「ただ解くだけでなく、有効活用する」
より具体的に言えば、過去問を最初から本試験と同じように「50問を制限時間内にただ解いていく」のではなく、まずは1問あたりにかける時間をもう少し長くして
- 設問中の各々の選択肢について「どれが正しく、どれが間違いか」を確認する
- さらに間違いであれば「正しくはどうなのか」までを確認し、ノートをとる
ということです。
これにより、過去問を使った学習効果は、ただ問題を解くだけよりも格段に上がります。
その上で、過去問2周目以降は目的を「学習」から「試験本番に慣れること」に変えて、制限時間どおりに行ないます。こうした有効活用により、合格ラインである「7割以上の正答」へとつながります。
合格のポイントその3
受験しない試験の過去問からも情報収集する
より具体的には、
- 国家資格を受験する方は、国家資格だけでなく「技能試験2級」の過去問も確認しておく
- 技能試験2級を受験する方は、「国家資格」「技能試験1級」の過去問も確認しておく
- 技能試験1級を受験する方は、「国家資格」「技能試験2級」の過去問も確認しておく
ということです。
ただ、過去問は最新回、その前回、前々回の3回分がWEB上で公開されており、その3回分をすべて行なうとなると負担がかかりすぎますので、実際に受験する以外の試験の過去問は最新回のみ取り組まれることをおすすめします。
では、なぜこのように、受験しない試験の過去問も確認しておく必要があるのか?
それは次のような効果が得られるからです。
どの試験の過去問にも共通して出てくる問題がわかり、「重要ポイント」が把握できる
冒頭でお伝えしたとおり、国家資格と技能検定1級・2級の試験範囲はほぼ同じで、問われる内容の深さの違いがあるだけです。
そのため、自分が受験する試験以外の試験の過去問を見るのは無意味なことではなく、むしろ、どの試験でも共通して出てくる問題がわかるので「どこを重点的に学習すればよいか」が把握でき、非常に効果的なのです。
特に、どの試験でも共通して出てくるのに苦手なところや知らなかった言葉があれば、そこがあなたの重要な補強ポイントであると明確にわかります。なので、そのポイントを重点的に学習することで、得点の積み上げが実現します。
合格のポイントその4
論述試験と面接試験を別物と考えず、お互いをリンクさせた学習をする
そのため、両者の試験対策を別物と考えるのは非効率的であり、最初から双方をリンクさせて
- 論述で書く答案と同じように面接ロールプレイができる
- 面接ロールプレイでできることが論述でも書ける
ということを念頭に入れながら学習することが合格への最短距離となります。
ただし、面接試験は1点だけ、「振り返りを述べる機会」のあるところが論述試験と異なります。しかしながら、振り返りも「キャリアコンサルティングを行なう人には何が求められているのか」という観点から述べることなので、全く違う対策をするわけではありません。したがって、論述対策と面接対策はやはりリンクさせるべきと考えます。
合格のポイントその5
論述試験は設問がほぼパターン化されているので、繰り返しの演習がカギ
そのため、各々の設問に慣れ、本番で確実に模範的回答ができるようにするためには「繰り返しの演習」これがなによりも大切です。
“論述試験は答案に「自己理解」「仕事理解」「啓発的経験」「認知行動療法」などの
専門用語を並べて書くのがコツ”
そんな話がまことしやかに流れているようですが、それは表面的なテクニックであって本質的な対策ではありません。
本質的な対策は、やはり先ほどから述べているとおり「キャリアコンサルティングを行なう人には何が求められているのか」をふまえること。
そこから考えれば、
- 相談者が気づいていない、キャリアコンサルタント視点からの問題点
- 将来的な到達点である大目標と、実際相談者が困っていることを解決する小目標
など、各設問に回答するための必要な要素をすぐに導き出せることがなにより重要だということが見えてきます。
そしてもちろん、
- 答案用紙の回答スペースに適切な文章量で書ける
- 一文を短く、簡潔に書ける
といったことも必要です。
これらのことがいつでも可能な状態になるには、やはり「繰り返し演習」することが大切です。この繰り返しが、合格を確実に引き寄せる近道といえます。
合格のポイントその6
面接試験は、評価区分を理解し、各評価区分をクリアする言葉を話して試験官にアピールすること
1級も2級も、評価区分は「基本的態度」「関係構築力」「問題解決力」「具体的展開力(目標設定~方策実行)」の4つとなっています。
国家キャリコンの評価区分は「態度」「展開」「自己評価」ロールプレイ15分(2級は20分)
つまり、試験官はこれら4つの評価区分に関して合格レベル(配点の60%以上)に達しているかどうかを見ているわけです。
そのため、試験官に「この人は今、このプロセスを行なっている」ということが明確にわかるようにアピールすることが、合格につながるポイントの一つとなります。
そのアピールの方法としては、
「今、このプロセスを行なっている」ということがわかるフレーズを話す
というのが有効です。
※ただし「基本的態度」「関係構築力」に関しては決まったフレーズでクリアできるものではありませんので除外とします。
具体的な例を出すと、以下のようになります。
- 「〇〇さんの悩みはXXということでよろしいですか」(相談者視点の問題把握フレーズ例)
- 「私がキャリアコンサルタントとして思うには、△△が解決すると、○○さんの悩みがより解決に近づくと思うのですがいかがでしょうか」(CC視点の問題把握フレーズ例)
- 「〇〇さんの問題を整理してきましたが、ここでこれから一緒に進めていく目標を決めましょう」(目標設定フレーズ例)
- 「さきほど2人で設定した目標のために●●に取り組んでみませんか」(方策実行フレーズ例)
合格のポイントその7
グループワークを妄信しない
ということから、グループワークに参加される方も多くいらっしゃいます。
しかし、
- ① グループとして、逐語から読み取れる相談者像の決めつけやキーワード探しを行なうなど、1 つの結論や解答(それが正解かどうか不確かにもかかわらず)を出したがる傾向にある
- ② グループの指導者の資質に疑問がある
この2つが見受けられる場合は、そのグループからは離れたほうが良いと思います。
なぜなら、逐語から読み取れる相談者像の決めつけやキーワード探しを行なうという行為は、
「自分が答案を作成する前にグループ・ワークで他者の意見がインプットされ、そして、自分自身も考えを述べる機会があることによって、それを誰かに植えつけ、また誰かがそれに対して考えを述べる」
という、グループとしての準拠枠づくりに他ならないからです。
これでは、一人で考える洞察力を奪ってしまう可能性があります。その上、辿り着いた結果が正しいという保証もないのです。
そのようなグループでは、指導者もまたそれを好んで行なっていますので、指導者としての資質に疑問があるということになります。
もちろん、いくつか選択肢を残して1つの結論に絞ろうとはしないかもしれません。
しかし、そうであったとしても独力で答案作成する前のノイズとなる可能性が高いことは変わりません。
さらに、グループの人たちと仲良くなりすぎると相手の性格を把握しすぎてしまい、本来のロールプレイにならない可能性も高いです。
気心が知れた人を相手にロールプレイするということはまずありませんし、実際の面接試験でもそれは同じです。
また、仲が良すぎて「仲間のために動く」ことを優先し、本来の目的である「自分が試験に合格すること」が二の次になってしまう方もよく見かけます。
このように、グループワークは一見効果的な面接対策ができるように見えるものの、グループをしっかり見定めないとかえって逆効果となる可能性が高いので注意が必要ということです。
合格のポイントその8
試験日から逆算して、余裕を持った学習スケジュールを立てる
毎日根を詰めて学習するといった「余裕のないスケジュール」にしてしまうと、たとえば仕事の都合で学習時間が取れない日があったり、睡眠時間を必要以上に削って学習効率が悪くなる上に体調不良を起こして学習が滞るといったことにもなりかねません。
そのため、「毎日学習に充てられる時間は最低どのくらいなのか」「いつを学習休みの日とするか」「毎回の学習で、過去問を何問解けるか」といったことを考えながら、無理のない学習スケジュールを立てて毎日コツコツこなすことが重要です。
ポイントその9
指導員との個人面接を攻略する
ここで、「私はできていると思うのに、指導員が認めてくれない」とへそを曲げたりしてはいけません。
指導員も人間ですから、好き嫌いや相性というのもあると思います。しかし、実技免除への鍵を握っているのはその指導員です。
そのため、認めてくれない、と嘆くより、認めてもらうためにはどこをどうしたらよいか、という視点で個人面接に臨むほうが得策です。
さらに、個人面接で課題がわかったら、それ以降の振り返りの機会では必ず「面談でも言われて気になっている点」を含んで述べるようにしてください。
たとえば
「面談でも言われた、先走って発言してしまうことを注意して、ぐっとおさえてCLの言葉を待つように努力しました」
「わたしのクセである早口は面談でも指摘されたのですが、今日はゆっくりと話すように心がけて、できたと思います」
といった感じです。このように、指導員からの助言を心に留めて講座に臨んでいる様子を振り返りに織り込んでアピールするのです。これにより指導員は、「この人は自分自身の課題を意識して、改善して行こうとしている」と認識するのです。それが評価につながり、実技免除の扉を少しずつ開けていくことにつながります。
以上が私の受検経験、またこれまでの指導経験から来る、合格のポイントです。
さらに詳しく合格のポイントを知って効果的な学習をされたい方は、国家資格・技能検定の別、また、学科・実技(論述)・実技(面接)の別に、それぞれ個別具体的に特化した対策教材をご用意しております。
ぜひ手に取ってみてください。