国家資格キャリアコンサルタントとは
現代はすでに終身雇用制が崩れ、同じ企業で定年まで働くということが当たり前ではなくなっています。さらに、IT技術の進化など、仕事を取り巻く環境も激変し、たとえ同じ会社に居続けたとしても、仕事の内容も、そして人間関係も以前とは変わってきています。
このような背景から、「自身の適性や能力・関心」を把握して自己理解を深め、同時に現代社会にあるさまざまな仕事についても理解を深め、自分に合う仕事を主体的に選んでいくという「キャリア形成」がその重要度を増すこととなりました。
そのために、就業中、あるいは求職中の方に対して職業選択や能力開発に関する相談・助言・指導を行ない、キャリア形成を支援する専門家の存在が求められ、その専門家として誕生したのがキャリアコンサルタントです。そして2002年に厚生労働省が「キャリアコンサルタント5万人計画」を計画決定し、この決定に伴い、人材派遣会社やコンサルティング会社などのさまざまな機関や団体が、厚生労働省の認可を受けて「民間資格」としての認定試験や養成講座が行なわれるようになりました。
こうした流れを経て、2016年4月より、キャリアコンサルタントは職業能力開発促進法にて規定された「国家資格」となりました。国家資格となって以降はそれまでの民間資格と区別する意味で「国家資格キャリアコンサルタント」と呼ばれています。
国家資格となった背景
キャリアコンサルタントが国家資格となった背景には、
- 適切な職業選択の支援に関する措置や、職業能力の開発・向上に関する措置などが総合的に行なえるようになること。
- 国民が安心してキャリアコンサルティングを受けられる環境を整備すること。
といった「国の意向」があります。
国家資格となって変わったこと
- 1.試験実施団体が2つになった
- 民間資格時代はさまざまな機関や団体がキャリアコンサルタント試験を実施していましたが、国家資格となってからは「特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会(CC協議会)」「特定非営利活動法人日本キャリア開発協会(JCDA)」の2つの機関のみが厚生労働省の認可を受けて実施しております。
- 2.登録制になった
- キャリアコンサルタントの認定試験に合格し、かつ、指定登録機関による登録を行なって初めて「国家資格キャリアコンサルタント」の有資格者となり、これを呼称して活動することができます。また、登録は5年ごとに更新が必要です。
- 3.名称独占資格になった
- 国家資格キャリアコンサルタントの資格を取得し、かつ、指定登録機関による登録を行なっていない人は、「キャリアコンサルタント」という名称はもちろん、「キャリコン」「キャリアコンサル」など、キャリアコンサルタントであるかのように誤認させる名称を用いることができなくなりました。
国家資格キャリアコンサルタントの存在意義
「就職活動しているけど自分がどんな仕事に適しているかわからない…」
「社内でキャリアアップしていきたいが、そのためにどうしたらいいかわからない…」
「社員の人材育成をしたいが、どんなふうに進めていけばいいかわからない…」
そんな悩みを持つ個人や企業に対して助言や指導を行なう国家資格キャリアコンサルタントは、社会性に富んだ価値ある仕事であるといえます。そのため、国もキャリアコンサルティングを受ける個人や企業に対し、控除制度や給付制度、助成金といった制度を設けて支援を行なっています。
キャリアコンサルタント試験について
国家資格キャリアコンサルタントになるには、厚生労働省から試験団体として認可を受けた「特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会(CC協議会)」または「特定非営利活動法人日本キャリア開発協会(JCDA)」が行なう認定試験「キャリアコンサルタント試験」に合格することが必要です。
キャリアコンサルタント試験は、キャリアコンサルティング業務に必要な学識・知識・技能等の程度を判定するために行なわれます。試験は学科と実技論述・実技面接の3つからなり、このすべてに合格する必要があります。どれかに不合格となった場合は、その試験のみを次回以降の試験で受験し、合格すればキャリアコンサルタント試験の合格者となります。つまり、合格した試験については免除されるということです。
試験日程は一つの年度につき4回(5月8月、11~12月、2~3月)。
試験結果は合格・不合格・点数のみ通知され、学科試験の正誤の内容や実技試験でどのポイントが具体的に不足していたかを知ることはできません。
キャリアコンサルタント試験の受験資格
キャリアコンサルタント試験は、次のいずれかの要件を満たした方が受験できます。
1)厚生労働大臣が認定する講習の課程を修了した者
2)労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発及び向上のいずれかに関する相談に関し3年以上の経験を有する者
3)技能検定キャリアコンサルティング職種の学科試験又は実技試験に合格した者
4)上記の項目と同等以上の能力を有する者
(厚生労働省ホームページより)
上記のうち、多くの方は2~4には該当しないため、「厚生労働大臣が認定する講習」を受講することで受験要件を満たしています。この講習は2016年5月1日現在、15講習が認定されています。受講の総時間は、通学制で平均90時間程度、通信制で平均50時間程度です。
キャリアコンサルタント試験の試験科目
キャリアコンサルタント試験の試験科目は次のとおりです。
- 職業能力開発促進法その他関係法令に関する科目
- キャリアコンサルティングの理論に関する科目
- キャリアコンサルティングの実務に関する科目
- キャリアコンサルティングの社会的意義に関する科目
- キャリアコンサルタントの倫理と行動に関する科目
(厚生労働省ホームページより引用)
したがって、「厚生労働大臣が認定する講習」においても上記の科目に対応したカリキュラムが組まれています。
キャリアコンサルタント試験の試験区分と出題形式、および合格基準点
試験区分 | 学科 | 実技 | |
---|---|---|---|
論述試験 | 面接試験 | ||
出題形式 | 筆記試験 四肢択一のマークシート方式による回答 |
記述式 逐語記録を読み、設問に解答する |
ロールプレイ: 受験者がキャリアコンサルタント役となり、キャリアコンサルティングを行う 口頭試問: 自らのキャリアコンサルティングについて試験官からの質問に答える |
問題数 | 50問 | 1〜2問 | 1ケース |
試験時間 | 100分 | 50分 | 20分 (ロールプレイ15分/口頭試問5分) |
合格基準 | 100点満点で70点以上の得点 | 150点満点で90点以上の得点。 ただし論述試験の満点の40%以上、かつ面接試験の評価区分の中の「主訴・問題の把握」「具体的展開」「傾聴」のいずれにおいても満点の40%以上の得点が必要 |
*学科試験と実技 (論述) 試験は同日、同会場で行います。
キャリアコンサルタント試験の合格率
試験実施機関である「特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会(CC協議会)」および「特定非営利活動法人日本キャリア開発協会(JCDA)」は、各々の機関で実施したキャリアコンサルタント試験の直近3回分の合格率を公表しています。
当アカデミーではCC協議会が主催する試験のみをサポートしているため(詳細はこの後の項目参照)、同試験の直近3回分の合格率を以下にご紹介します。
試験種別の合格率
第3回 | 第2回 | 第1回 | |
---|---|---|---|
学科 | 66.1% | 77.2% | 81.0% |
実技 | 65.7% | 74.3% | 71.6% |
学科および実技試験同時受験者の合格率
第3回 | 第2回 | 第1回 | |
---|---|---|---|
50.6% | 67.2% | 59.1% |
当アカデミーは「特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会(CC協議会)」が実施する認定試験に対応しています。
これはつまり、もう一方の認定試験機関である「特定非営利活動法人日本キャリア開発協会(JCDA)」が実施する認定試験には対応していない、ということです。
その理由は、JCDAは「厚生労働大臣が認定する講習」も行なっている認定試験機関だからです。そのため、JCDAが実施する認定試験を受験する方は、初めからJCDAの養成講習を受講するのが合格の近道なのです。
一方、「厚生労働大臣が認定する講習」の一つに、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が主催するキャリアコンサルタント養成講習があります。同協会は民間資格である「産業カウンセラー」の認定試験を行なっており、ここで産業カウンセラーの資格を取得された方が次のステップとして「国家資格キャリアコンサルタント」を目指すケースが多いことを受け、キャリアコンサルタント養成講習も開講しています。
ただし、同協会は国家資格キャリアコンサルタントの認定試験機関ではありません。そのため、同協会のキャリアコンサルタント養成講習を受けられた方の多くは、「特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会(CC協議会)」が実施する認定試験を受験されます(逆に、CC協議会は国家資格キャリアコンサルタントの養成講習を行なっておりません)。
そして、当アカデミーは「産業カウンセラー試験」の受験対策サポートも行なっており、当アカデミーの教材で学習されて合格し、晴れて産業カウンセラーとなられたたくさんの方々より
「キャリコンの受験対策もお願いします」
と、熱いご期待をお寄せくださいました。
このような経緯で、当アカデミーは「特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会(CC協議会)」が実施する認定試験のみに対応している次第です。